どうも、声優派遣屋の矢吹です
今回は課題原稿の3文目(
オレンジ色のメモがある文章)について詳しく解説をしていきたいと思います。
まず3文目の文の構造を見てみると、「
果たしています」という部分が述語(正確には述部)として働いています。ではこの文の
主語は何なのか、と考えるとこれもまた2文目と同じで「
生涯学習は」という主語になります。
ここで、文章の意味を考えてみましょう。
「
社会人のキャリアアップ」や「
高齢者の生きがいづくり」に役立っているのは「生涯学習」であるということが、この文が伝えたい内容です。
しかし「
生涯学習は」という言葉は3文目には出てきません。そのため、今回も
述語にあたる「果たしています」のみに関して「調子」を下げるようにします。ただ、この言葉だけでは短すぎてうまく調子を下げきれない、もしくは下げすぎて語尾が消えてしまう、といった事態になりやすいと私は考えます。そのため文章中では
「大きな役割を」という部分にも調子を下げるようなメモを残していますよね。
これは正確には「果たしています」だけを下げるのですが、読みやすくするために「大きな役割を果たしています」という大きなまとまりをだんだん下げながら読む、という意識をもった方がうまくいきやすいと思います。
続いて
区切りを考えます。
「 / 」が1か所、「 v 」が2か所に記してあります。以前にもお話しした通りまずは「 / 」で区切ることを前提に考えます。そうすると「区切ると読みやすそうな部分」は「 / 」、「 v 」で示した計3か所です。ではなぜ後ろ2つは「 / 」ではなく「 v 」なのでしょうか。
これを考えるにはまず「
並列の関係」について理解することが重要です。
この文中の「
社会人のキャリアアップ」と「
高齢者の生きがいづくり」は
意味の上において両方とも等しく「生涯学習」の目的です。もちろん生涯学習の目的は他にもたくさんあるのでしょうが、代表としてこの2つが取り上げられています。
「意味の上で等しい」ということは文の中で「対等な立場にある言葉どうし」だということ。対等な立場にある言葉どうしは間に区切りを入れつつ同じ高さから読み上げる必要があります。これを並列の関係といいますが、
並列の関係にある言葉どうしは「〇〇、△△、□□、××、◎◎」といったように複数のものを
読点「、」だけで区切って記してある場合と「〇〇と△△と□□」のように、
「と」で関連付けて記されている場合があります。(もしくは読点「、」で区切ってあっても、並列の関係にある言葉の数が3つ以内程度の場合は「と」で区切っているものと同じとみなします。)
前者の場合は、並列の言葉ひとつひとつを丁寧にゆっくり、はっきりと言い、区切りの間(ま)も十分にとることで相手に聞かせようとする場合が多いです。 逆に
後者は前者に対してあっさりとしている場合が多く、区切りの間(ま)も十分にとらない傾向があります。今回は後者ですので区切りの間の取り方は「 v 」に該当する「一瞬の間」の方がふさわしいのです。最後の「大きな役割を〜」の直前に存在する区切りは、考え方は少し複雑なのですが、
こちらも
意味のまとまりで間を考えます。
まず「
社会人のキャリアアップや高齢者の生きがいづくりに」と「
大きな役割を果たしています」は意味的に繋がっていると理解してください。 大きな役割を果たしていると聞いても聞いた人は「何に」対して役割を果たしているのかわかりません。
「社会人のキャリアアップや〜」と聞いて初めて何に役立つかがわかります。 つまりこの2つは意味の上では切り離せないのです。そして更に見てみると「
社会人のキャリアアップや」と「
高齢者の生きがいづくり」という2つも先ほど見てきたように同じ生涯学習の「目的」を表す部分(並列の関係)ですので、
こちらも意味の上では切り離せません。しかし先ほど「並列の関係」の考えにおいてこの2つの間(あいだ)に間(ま)が存在しているというお話をしました。現に「社会人のキャリアアップや」と「高齢者の生きがいづくりに」の間には「 v 」の記号があります。ここで区切ってあることで、もし「
社会人のキャリアアップや高齢者の生きがいづくりに」と「
大きな役割を果たしています」の間に区切りがなかった場合、
「大きな役割を果たしている」のは「高齢者の生きがいづくりに」だけになってしまいます。この間の取り方だと、意味の上で「社会人のキャリアアップ」と「高齢者の生きがいづくり」が離れているように聞こえるからです。(「〜キャリアアップや」の時点でしっかりと区切ってしまっており、後の部分を続けて読むことで、続けて読んだ部分すべてが同じ意味を表しているように聞こえてしまうため。)
しかしだからといって「 / 」の間をとると、今度は「
社会人のキャリアアップや高齢者の生きがいづくり」と「
大きな役割を果たしています」という2つが意味がかけ離れているように聞こえてしまいます。
そこで使われるのが「区切らない」と「がっつり区切る」の間(あいだ)に位置する一瞬の間(ま)「 v 」というわけです。これを使うことでこれまでに説明した
意味のまとまりが損なわれることなくバランスを保った状態で相手にこの文の意味を伝えることができます。また、読んでみるとわかりますが、この区切り方だと非常に読み手としても読みやすいです。
いかがでしょうか
説明が長くなってしまいましたが3文目の解釈としては以上のようになります。
「
ナレーションの原則」、「
意味のまとまり」、「
文法(文章構造)」、「
相手への伝わりやすさ」、「
自分にとっての読みやすさ」すべてを総合して考えたとき、どの読み方が最善なのか。それはもしかしたら人によっても違うことがあります。例えば自分にとっての読みやすさというのは、その人その人の読みのレベルによって違います。
ここで学んだ原則や考え方を元にあなたにとっての最適なナレーションを考えてみてください
posted by Voice Closer 矢吹 at 21:52|
Comment(0)
|
TrackBack(0)
|
ナレーション講座
|
|