「タ行」というのは不思議なもので、言い方一つでセリフやナレーションを攻撃的なものにも、優しいものにもします。
特に「た」、「て」、「と」は「〜した」という過去表現をするときや「◯◯と◯◯」というような並列を表すとき、「〜して、◯◯」というような接続を表すときなど様々な場面で登場します。(※「ち」や「つ」は無声化などの問題があり、そちらを意識すべきです。)
例えば攻撃的なものの例でいえば、
信じていた相手に裏切られた時の、「私(俺)は◯◯した!! なのに…」というようなセリフにおける「した」の部分がそうですが、激情的なセリフにタ行が用いられているとよく映えます。
またアニメやゲームのキャラクターが使用するようないわゆる「必殺技」にタ行が含まれていると非常に力強く聞こえます。
大勢を目の前にした説得のための演説などでも使えるでしょう。
こういった「強く」声を発するときには、
ではもう片方の「優しいタ行」とはどんなものなのでしょうか。
先ほど触れたように、タ行は普通に発していたとしても、録音して聴いてみた時には「強く」きこえてしまう音です。同じ文章を言っていても、それが相手に語りかける場面であった場合や、静かなドキュメント番組などであった場合はどうでしょうか。これらのシチュエーションでは優しい聞こえ方にするためにタ行を工夫して発音する必要があります。
優しい聞こえ方には
@口の開き方を少しだけ小さくする
Aタ行発音時の唇を少し引っ込めたり下にさげたりし、音が上に飛ぶのを防ぐ
この2点を意識すると、初心者の方は比較的なりやすいかと思います。
また、「そっと」「ずっと」「だった」など、タ行の前に「っ」が入っているパターンもよく見かけます。そして上記の語句を見る限りこれらが含まれる文章はゆっくり優しく、そして時には余韻を残して喋ることが必要になる場合も多そうです。
こういった場合は「っ」に割く時間を通常の2倍以上にしましょう。
「そっと」ならば「そ...っ...と...」など、一つの単語をゆっくり時間をかけて言うことで落ち着いたイメージを出します。そこに先ほどの2つの原則を当てはめれば完璧です。
その他番外として「あたたかい」の言い方を紹介します。
ナレーション中の「あたたかい」などそんな気はなくても「あたた『た』かい」のように焦って滑っているように聞こえてしまうことがあります。確かに「あたたかい」は言いにくい単語ですが、この単語のみ、もしくは前後も含めて徹底的に「ゆっくり」と発音しましょう。「あたたかい」自体優しい響きを持つ言葉ですので、ゆっくり、さらにタ行の言い方原則を加えると非常にぬくもりのある言葉に聞こえます。
「今週末はあたたかくなる見込みです。」
などの文章を使い、練習してみましょう。